船乗り込み

石津純江

2007年06月08日 13:41

先日 博多座の今月の歌舞伎を前にして
中洲店ランジェリーハウスセシルの前を流れる 博多川で 
船乗り込み」がありました。

ご存知のように 歌舞伎の出演メンバーが10数隻の舟に乗り
     華やかにパレードするのです。

私の母は毎回 これを楽しみにしていて 
歩行が困難になった今でも
早めに準備をし 歩行車(?)を押して行っては 橋の上から楽しみます。


このたびは 博多座の「十二夜」のため 菊五郎、菊之助に加え
NHK「風林火山」の 武田信玄役 市川亀冶郎 も参加していました。

ちょっと小さなご縁があって 亀冶郎さんにお目にかかったことがあり
母にとっては もう 特別な思いがあったことと想像します。

舟がやってくると ようよう立ち上がって欄干をつかみ
澤瀉屋あっ !」 「亀冶郎さ~ん!」 と大声で叫んだようです。

それを隣で見ていた ご婦人が
「もしよかったら 写真を送ってあげましょう」と 住所を訊ねられたとのこと。
付き添っていた者とも相談し すぐに住所をお伝えしたのです。

数日たって 「ピンボケですが。。。」 と
あの時撮った 亀冶郎さんのスナップが数枚送られてきました。
式典の最中に チャンスを探しながら 一生懸命撮られたもののようです。

封筒の裏には フルネームはあるものの 住所は城南区までしかありません。

便箋3枚にわたり 女性らしい美しい文字でお手紙が添えられていました。

あなたのお姿に 元気を頂きました。 感謝しています。
      いつか 博多座ででも お逢いできるといいですね。


母は なんとかお礼を申し上げたいと願うのですが
私は この方のお気持ちがあまりに美しく
  そっと頂いておくことこそお礼であるような気がしました。

母は 「どこかでお逢いできたらいいね。」 と
  大切に大切に日記に挟んだのです。


日々のニュースに 切ない思いのこのごろ
 プライバシーなどと硬いこと無しに
このようなやり取りが 通用することが なんだか嬉しい気持ちになりました。

※読売新聞に掲載された「船乗り込み」の様子はコチラ