博多の地で下着を製造販売し続けて25年。ある日、ハンデを背負う一人の女性との出会いをきっかけに「体が不自由でも一人で着れる下着」「幸せになる下着」を作ろう!と思い立ちました。女性としての喜びを忘れない、その思いを下着に託しつつ我が人生も彩りたい、そんな日々を綴ります。

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2006年12月09日

ある日のアトリエ

下着に困っている人の駆け込み寺になってしまった私のアトリエに
    (といっても 狭い 小さな物置ですけど。。。)
ステッキを持って体をかばいながら 
ひとりの初老のご夫人が訪ねてこられました。

30年も前に肺の手術を受けたものの
背中の傷の部分には いまだにガーゼを大きく当てたまま、
肋骨を6本も失い 更に腎臓摘出 乳がんで片方の乳房摘出と
気が遠くなるような苦難を 淡々と語られます。

とてもきちんとした品のある女性で
「お洒落をしたい」と そうおっしゃるんです。

大きな手術を何度も受けられたその体は
内臓が左に偏って膨らみ、左の肩もそちら側に下がっています。
背中は失った肋骨の隙間に 残された傷が大きく陥没し
深い溝につながっている筋肉も広く陥没しています。
そのうえ右の乳房がありませんから
立っているだけでも バランスがとりにくいと思われました。

「スカートがね こちら側がどうしても上がるのよね」
「ブラウスを着ると左が下がってしまうから。。。」
次々にお願いごとが湧いてきて
しかも それをにこにこしながら相談なさるんですよね。

「ひとつでも叶ったら嬉しい」と。

定番のキャミブラの中から ひとつを取り出しました。
脇の部分の陥没したところをカバーする 広めのパットと
肩の高さを調整するパットは 
それぞれ ガウディーみたいな曲線を描いた芸術的な(?)パット。
お腹の膨らみのためには微妙なカッティングが必要でした。
ようやく全体が歪んでいるのに合わせて 歪んだブラが出来たんです。

1ヶ月ほどかかってしまった スペシャルバージョンのキャミブラを
待ちかねたように着けたとき ブラウスの肩が左右同じ高さになりました。

「そうです! そうです!」弾んだ声があがります。

お腹の膨らみも 背中の窪みもなんとかカバー出来まして 第一段階クリア。

「私だけじゃなく 他にもきっといらっしゃる。
 私のことを参考に 困っている人に もっと伝えて」とおっしゃいました。

もっといいもの作らなきゃ! また力が湧いてくるんですよ。  


Posted by 石津純江 at 15:40Comments(3)